後半にさしかかったNHK大河ドラマ「光る君へ」では、いよいよ「源氏物語」の執筆の場面が展開されそうだ。源氏物語を研究する清泉女子大学文学部教授の藤井由紀子さんは、紫式部がどんな思いで源氏物語を書くのか、その様子がドラマでどう描かれるのか、期待を寄せる。
- 【前編はこちら】大河「光る君へ」は源氏物語の「逆再生」 研究者もうなる脚本の妙
――書くことの大切さが伝わってくるドラマですね。
書いて残すという営為は、これからも確実に残ります。AI(人工知能)ではできない部分が絶対にあると思います。点と点、事実と事実をつなぐとき、人間の感性がすごく大事になります。
大河ドラマもそうですよね。史実は決まっていて、それぞれ点はある。そこをどうつなげて、ストーリーにするか。その作業は、AIにはやりきれないと思います。
感動を呼んだ「枕草子」の誕生シーン
――点と点でいうと、清少納言と中宮定子のつながりが印象的です。
枕草子が誕生するシーン、感動しましたよね。
枕草子の成立には様々な説がありますが、私は、たぶん完成してないんだろうな、もっとちゃんとした日記作品にしたかったんだろうなという気がしています。
「山は」とか「うつくしきもの」とか、ひとつのテーマを提示して、あてはまる物事を列挙するスタイルの章段がありますが、これは、定子が「何々は」と言って、女房たちが口々に答えを述べた場面の記録という説もあって、いま残っているのはそういうメモ段階のものまで含んだ作品という感じがするんです。
でも、輝かしい定子の姿を書き残しておきたいという清少納言の気持ちがあったのは間違いないです。ドラマでは定子を救うために書かれたと、非常にうまく描いていましたよね。
――源氏物語だけでなく、枕草子も、いまに残っているのが奇跡のようです。
そうですよね。同じ時代に…