コロナ禍で一気に広がったリモートワークは、通勤時間の短縮や育児・介護との両立など働き手の利点がよく強調される。一方、実は「社長業ほどリモートに向いているものはない」と言う経営者もいる。産業用機械の設計・製造などを手がける「セック」(兵庫県明石市)の平井康介社長(42)に、そのわけを尋ねた。
――社長就任は2015年ですね。
セックは従業員76人、年商約17億円の同族会社です。先代社長の父の指示で、関連会社の管理部長から後任になりました。当時の会社は、社長があらゆることに指示を出すトップダウンの組織で、社員は常に「指示待ち」。イスを一つ買うのにも「社長、どうしましょうか」と聞かれるほどでした。
社長になり立てで、まだ何も知らない私にもすべて丸投げされる。「このままでは社員の成長につながらず、後任にも引き継げない」と思いました。
――何をしましたか。
私が考えたのは「社長のリモート勤務」でした。出社しない日を週に1~2日つくり、社員との物理的な距離をとることを17年から始めました。そのうえで、判断を求められたら「あなたはどう思う?」って問い返し、その答えが出るまで私は絶対に決めないことにしました。
すると、選択肢のある問題な…