授賞式会場の王谷晶さん(左)とサム・ベットさん

 私も力が強かったら――。世界中のたくさんの女性たちがきっと考えたことのある願いを、王谷晶さんは小説「ババヤガの夜」でかなえた。

 翻訳本は英米で大きな反響を呼び、英ダガー賞の翻訳部門を受賞する快挙を成し遂げた。

  • 英ダガー賞に王谷晶さんの「ババヤガの夜」 翻訳部門、日本作品で初

 「物理的に女性が男性を凌駕(りょうが)するのはまあまあ難しいことだと思うんですけども、フィクションの中ならやれるなと思った」

 小説の中でなら、どんな人でも、いかようにも、暴れさせることができる。

 主人公には暴力が唯一の趣味の女性、新道依子を据えた。依子が服を脱ぎ捨てれば、あらわになった乳房よりも見事に割れた腹筋が威容を見せる。その腕っぷしの強さを買われて、暴力団会長の令嬢の護衛をすることになり、裏社会の男性たちと対峙(たいじ)していく。

 だが、一筋縄にはいかない。

 「男性社会にあらがう女性と…

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