天理の赤埴幸輝

 多くの選手にとって障壁となった変化を、飛躍の転機にした選手がいる。

 反発の低い新基準の金属製バットが導入された昨春、天理の赤埴(あかはに)幸輝は「僕の力では飛ばない。変わらないと、と思いました」。

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 柔らかいグラブさばきが光る遊撃手。1年春からベンチ入りしたのも、守備を評価されたからだと感じていた。身長180センチ、体重70キロほどでやや細身。新しいバットはパワー不足をより鮮明に突きつけてきた。練習中に自分の打球を目で追うと、その先でほかの選手の打球が弾んでいた。

 「自分の力がはっきりわかった」

 遠くに飛ばすことに固執するのではなく、正確に球をとらえることに的をしぼった。練習では常に打撃投手の防球ネット上付近を狙い、バットコントロールやミートさせる感覚を意識した。

 成果は半年で出た。広角に速い打球を打てるようになり、昨秋の打率は4割8分4厘。藤原忠理監督も「動体視力が優れている」と目を細める。

 飛距離よりミート力、と割り切れたのは、その方がチームの力になれると考えたからだ。「僕より飛ばす頼もしい同学年が後ろにいる。ヒットで塁に出ればいい」。冬場の体づくりのおかげか、この春は練習試合で本塁打を放つほどの力もついてきた。

 チームのことを最優先にするのは、「甲子園への思いが一番だから」。野球の楽しさを教えてくれた2学年上の兄・克樹さんも天理の野手だった。兄が3年生、自身が1年生の夏は、ともにベンチ入りするも奈良大会準決勝で敗れた。兄とともに甲子園に立てなかった悔しさが弟の原動力だ。

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