記者解説 中国総局・鈴木友里子、論説委員・村上太輝夫
いま世界経済で大きな問題となっているのが製造業大国となった中国の「過剰生産能力」だ。国際会議のたびに、中国の名指しは避けつつ言及されている。5月にカナダ・バンフであった主要7カ国財務相・中央銀行総裁会議の共同声明でも触れていた。
中国は1980年代に改革開放政策を本格化させ、輸出を拡大しながら経済成長を遂げてきた。自由貿易を推進する世界貿易機関(WTO)に2001年に加盟すると輸出拡大のペースは加速。09年にはドイツを抜き去って世界一の輸出大国となった。
当初の主な輸出品はアパレル、家具、家電といった労働集約型産業が生み出す製品群で「老三様(旧・三種の神器)」と呼ばれる。これに対し今の主役は「新三様」と呼ばれる電気自動車(EV)、リチウムイオン電池、そして太陽光発電関連製品だ。
EVが牽引(けんいん)役となり自動車の輸出台数で中国は23年に日本を抜いて世界一となった。国際エネルギー機関(IEA)によれば、太陽光発電関連の各段階の製品で世界シェアが8~9割に達している。
競争力の要因の一つは産業政策だ。育てる産業と目標を中央政府が定めると、地方も競い合うように補助金などの優遇策を出す。
EVについては09年から購入補助金などの政策を通じ、国を挙げて開発・普及を促した。そこに企業が次々と参入し激しい競争が起きる。中国メディアなどによると、EVを含む新エネルギー車のメーカーは20年ごろに約500社を数えたが、足元では1割程度にまで減った。淘汰(とうた)はさらに進むとみられる。
ポイント
中国が製造業大国になれたのは、国の支援に加え厳しい競争と産業集積が大きい。過剰な生産能力は日米欧のみならず、産業を育てたい途上国にとっても懸念材料だ。中国の輸出依存は持続可能ではなく、内需拡大などをどう促していくかが課題となる。
勝ち残った企業が世界市場に…