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操上和美「88歳のポートレート 『ぎりぎりまで近づいて』」

 基本的に年は考えちゃだめなんです。俺は今いくつだとか思いだしたら、無理をしなくなる。年齢を言い訳にするのは格好悪いでしょう。

 写真家・操上和美さんが半生を振り返る連載「88歳のポートレート 『ぎりぎりまで近づいて』」。全3回の初回です。(2024年2月に「語る 人生の贈りもの」として掲載した記事を再構成して、配信しました。

 《88歳。1960年代後半からフリーの写真家として活動を始め、西武百貨店、パルコなどの斬新な広告写真のほか映像作品も手がけ、注目を集めた》

 俳優、作家、ミュージシャン、デザイナー。あらゆる著名人を撮ってきました。俳優の宮沢りえさん、木村拓哉さんは友人でもあり、10~20代から30年ほど撮っています。市川染五郎さんのように孫ほど年の離れた人とも仕事をしますが、若い人であっても関係づくりに苦労することはないですね。写真家は撮影しながら被写体の魅力にインスパイアされるんです。こちらの感性も磨かれる。やればやるだけ勉強になります。

 撮影では「撮れた」という感覚はあるんです。でも、夜寝るとき、被写体にこんな言葉をかけていたらもっと違った写真になったんじゃないか。なぜ言えなかったのか――。そんなことを考え出して絶望する。今でも毎回そうですよ。

 《撮影の依頼が途切れることはなく、雑誌、広告と今も一線で活動する。過去は振り返らずにここまで来た》

 今日、明日の仕事をどうするか。それだけを考えて、前へ前へと走って生きてきました。でも不思議と昔の話はだいたい記憶に残っています。普通のスナップ写真でも、見ればどこで撮ってどんな状況だったのか、かなり正確に思い出す。シャッターを切るということは、カメラだけでなく頭脳にも記録している。そんな感じがしますね。

 ここまで仕事を続けてこられたのは、小さいころから北海道・富良野で農作業をしていたのが大きいと思います。

■富良野で農作業、鍛えた体と…

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