袴田さん事件58年 なぜ死刑囚にされたのか

 「4人の尊い命が失われたことを、どうか忘れないで」

 2024年5月、袴田巌さん(88)の再審公判の法廷で、被害者遺族の意見陳述書が代読された。

 袴田さんが無罪になっても、1966年に一家4人が殺害された事実は残り、真相も真犯人も、わからないままだ。時効は成立している。

 陳述書は、被害に遭わず、残された長女(当時19)の次男が提出した。

  • 【特集】袴田巌さん58年後の無罪 なぜ死刑囚にされたのか

知人「恨まれるような人ではない」

 長女は当時、父方の祖父母と、近くの別宅で生活。事件前夜は、友人との九州旅行から帰ってきたばかりだった。

 家業の「こがね味噌(みそ)」の専務だった父親の橋本藤雄(ふじお)さん(当時41)、母親のちえ子さん(当時39)、妹の扶示子(ふじこ)さん(当時17)、弟の雅一朗さん(当時14)。一夜で4人を失った。

 藤雄さんは終戦後に家業の手…

共有
Exit mobile version