新幹線もとまるJR西明石駅(兵庫県明石市)から、歩いて20分ほど。
新しい家も目に付く住宅街に、異様な外観をした住宅が残されていた。
低い石塀に囲われた建物は、すべてをツタ類など何種類かの植物にのみこまれ、壁はほぼ見えない。それでも植物の形から、2階建てだったことはわかる。玄関部分には車が放置され、その上に枯れ葉が積み重なる。
道路から投げ込まれたのか、空のペットボトルや、ごみが入ったポリ袋が散乱していた。
明石市との境界にほど近いが、この建物の所在は神戸市西区になる。
繁茂した草木が大量の枯れ葉を発生させ、ごみの投棄を招く空き家。神戸市には数年前から、近隣の住民から対処を求める声が寄せられていた。
神戸市は、所有者を知るため不動産登記を調べた。木造瓦ぶき2階建ての建物は延べ約90平方メートル。1976年に建てられ、翌77年、個人名で所有権が登記されていた。
土地は違っていた。1970年代の区画整理を経て、建物とは別人の名で76年に所有権が登記されていた。この人の登記上の住所地は、兵庫県内の別の市になっていた。
この2人の関係はわからない。
行政が、所有者の了承なく、勝手に空き家を取り壊したり修繕したりする権限はない。代執行するにしても一定の手続きが必要になる。
神戸市は、それぞれの所在を捜した。
別の市にも照会したが、それ…