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花井美春のキミとキラッキランラン

 放送中のアニメ「キミとアイドルプリキュア♪」(ABCテレビ・テレビ朝日系、日曜朝8時30分)のキャストが月に1度、思いを語る連載「キミとキラッキランラン」。7月末は、キラキランドからプリルンを追ってやってきた妖精・メロロンを演じる、声優の花井美春さんに聞きました。

 メロロンは、「ねえたま」と慕うプリルンと共に、「伝説のハートキラリロック」を使ってキュアキッスに変身しました。ハートキラリロックはハート形の錠と鍵で、どんな願いもかなえられるアイテムです。しかしそのためには、2人がそれぞれいちばん大事にしているものを封印しなければならなかったのです。

 プリルンは「咲良(さくら)うたとの思い出」を封印しましたが、メロロンが封印したものはいまだ「内緒」。アフレコのたびに、プリルンを演じる南條愛乃(なんじょうよしの)さんからメッセージが届くそうで……。

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昔も今も、推しはホワイト

 メロロンが、伝説のハートキラリロックに封印したものは一体何なのか。よく南條さんから、LINEで「これかな?」とメッセージが届いて、「メロクイズ」が始まります。

 プリルンと一緒に鍵をかけた第17話(6月1日放送)の収録前、私だけがスタッフの方に呼ばれて、その答えを教えてもらっているんですね。

 もちろん教えられないので、キュアアイドルが「内緒♪」と言っているスタンプと一緒に「内緒メロ♡」と返しています。

 私がキュアキッスとして、南條さんがキュアズキューンとして初めて収録するとき、シリーズディレクターの今千秋さんから、この2人組について「初代以来のブラックとホワイトだよ」と教えていただきました。

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キュアキッス(手前左)とキュアズキューン(手前右)©ABC-A・東映アニメーション

 それがすごくうれしくて。

 キュアブラック(美墨なぎさ)とキュアホワイト(雪城ほのか)が活躍する、「ふたりはプリキュア」(2004~05年)は小さい頃に、リアルタイムで見ていました。

 普段の中学生の姿もすごくかわいいけど、やっぱり変身して、きらびやかな衣装になって、「女の子が戦っている」という姿が、私の心にビリッときました。かわいいのに、強い。そこにあこがれました。

 その頃は、ホワイト派だったんです。

 ボーイッシュ系のなぎさちゃんもかわいいけど、お嬢様みたいなかわいらしさを持つ、ほのかちゃんが大好きでした。プリキュアごっこをやるときも、周りのお友達とホワイト役は取り合いになりましたね。

 それ以降、ずっと無かった組み合わせを私たちがやらせていただける。普通はプレッシャーを感じるはずなのかもしれないけれど、うれしい思いのほうが強かったんです。こんな未来が私にあるなんて思っていなかったから。

 黒いキッスと、白いズキューン。昔も今も、推しカラーは白のままですね(笑)。

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プリルンが変身したキュアズキューン(中央)の魅力を説くメロロン©ABC-A・東映アニメーション

収録現場の頼れるねえたま

 うれしい役なのですが、メロロンは私にとって一番難しいキャラクターでもあります。

 今までは元気なキャラクターを演じることが多かったのですが、メロロンにはミステリアスなところがある。特にキュアキッスに変身すると、それがより深まりますし、がらりと変わってお姉さんらしい雰囲気も出てくる。自分の中に無い引き出しが求められている気がしています。

 アフレコが始まった頃、自分のイメージするメロロンと、実際に出ている声が全然違うと思って悩んでいたことがありました。「こうじゃない」と悶々(もんもん)としていたんです。

 そんな時に「大丈夫?」と聞いてくれたのが、今さんでした。「今言えなくてもいいから、LINEでも何でもいいから送ってね」と言ってくださって、私も本音を送りました。

 たくさんアドバイスをいただきました。一番自分に刺さったのが、「とにかく楽しんで」という言葉。

 はっとしたんです。「私は今楽しめていないんだ」と気づきました。一番大事なことを忘れてしまうぐらい、張り詰めていたんですね。

 楽しむことを思い出したら、収録にもリラックスして臨めるようになった気がします。メロロンは、こういうことを言うだろう、言わないだろうと堅苦しく考えずに、アドリブも自由にできるようになりました。

 すべてを知って、受け入れてくれる今さん。私にとって、収録現場の頼れる“ねえたま”です。

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キュアキッス©ABC-A・東映アニメーション

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思い出のグレープシャーベット

 そろそろ夏休みの始まった子が多いでしょうか。

 私が育った北海道では冬休みが長い分、夏休みが短くて、それでも宿題はいっぱいありました。

 宿題はすぐに手をつけたほうがいいですよね。特に日記。天気だけは埋めないと分からなくなっちゃうので……(笑)。

 小学生の頃は、友達と毎週プールに行っていました。大きな市民プールで、ウォータースライダーもあって、流れるプールで流されて。

 遊んだ後は、自販機でアイスを買って一緒に帰るんです。味は決まっていました。棒のついたグレープシャーベット。甘いだけだと飽きちゃって、ちょっと酸っぱいほうが好きでした。

 とにかく、自分の好きなこと、楽しいと思えることを大事にして過ごしてほしいです。友達と遊ぶのもいいし、家族と出かけるのもいいですよね。まったりおうちで過ごしても、ゲームしてもいい。きっと今が一番楽しいと思いますから。

感動の裏で大爆笑

 うたちゃんたちも、夏休みですね。ひまわり畑に行った第25話(7月27日放送)は、感動のエピソードでした。

 闇に閉ざされ、ザックリンダーになってしまった、ザックリー。彼のキラキラを引き出して、チョッキリ団から抜け出すまでに導いたのは、キュアウインク(蒼風〈あおかぜ〉なな)の「ザックリーさんとちゃんと話してみたい」という純粋な思いでした。

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ザックリー(手前)を抱き留めるキュアウインク(中央)©ABC-A・東映アニメーション

 実は、収録現場では、一番の大爆笑が起きた回でもありました。

 ザックリー役の佐藤せつじさんは、ザックリンダーになった彼をどう演じていくかを工夫しようとされていて。彼の見た目がメカっぽくなったことから、せつじさんはロボット感を出していったほうがいいんじゃないかと考えたそうです。

 最初のテストでは、セリフの抑揚をすべて消して、ロボットっぽく読んでいました。

 すると、ウインクとの掛け合いが面白い感じになっちゃって、せつじさんまで笑ってしゃべれなくなっちゃったんです。

 そこにウインク役のたかみな(髙橋ミナミ)さんが、笑いをこらえながらアドリブで一喝して(笑)。魂がこもっていて、さすがでした。

 その後、長考してからの本番が、すごかった。

 せつじさんはロボット感を入れつつ、気持ちのこもった演技をバチッと入れてきて。それに対するたかみなさんの演技も、聞いていて涙がにじむような受け答え。

 鳥肌がずっと立つような演技をお互いにされていて、本当にかっこよかったです。

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メロロンが抱えるものは?

 メロロンの視点から第25話を振り返ると、「光と闇は溶け合わない」とずっと言ってきた彼女にとっては、あり得ないことが起きた。闇に染まったはずのザックリーに光が戻るなんて、信じられない気持ちだったと思います。

 メロロン自身、キラキランドにいた頃は「他の妖精のようにキラキラできない」というコンプレックスを持っていました。暗い暗い氷のような心で、ずっと独りで本を読んでいた。

 真っ暗闇な世界から、明るくてあたたかな世界に引き出してくれたのが、プリルンでした。メロロンからしたら、ねえたまこそが光。「ねえたまがいたからこそ今の自分がある」みたいな気持ちがあると思うんです。

 メロロンは、「ねえたまがするなら、メロロンもするメロ」とよく言います。

 言い方が難しいですが、「メロロンを形作っているのはプリルンで、メロロンの中に自分は無いのかな?」と思うときもあります。

 だからこそ、うたとプリルンが仲良くしていると、「うたにとられちゃう」と思って、メラメラと嫉妬してみせるのかなと。

 そこには、「ねえたまがいなくなっちゃったら、自分はどうなっちゃうんだろう」「また元の真っ暗闇に戻ってしまうのが怖い」という気持ちがあるんじゃないでしょうか。

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プリルン(左)のことが大好きなメロロン©ABC-A・東映アニメーション

 メロロンのように「誰かをひとりじめしたい」という気持ちは、誰もがちょっとは持っていると思うんです。小さい子だけじゃなくて、大人になっても。だからすごく理解できると、私は思います。

 高校1年生のとき、いつも一緒にいるメンバーが5人いまして。その中でも一番仲がいいなと思っている子が、1人いたんですね。

 でもその子が、他のグループの子と仲良くしてるなと思ったことがあったんです。そのときはやっぱり、メラメラしましたね。「とられた!」って思っちゃいました。

 それでも、自分のメラメラした気持ちは言えなかったんです。関係性が壊れちゃうのかなあと思って。メロロンはちゃんと自分の気持ちが言える子。共感しながら見てくれる子もたくさんいるんだろうなと思っています。

 メロロンのプリルンへの思いは、家族愛でもないし、親友でもないし……、「本当にプリルンが全て」という感じ。メロは複雑で難しいんです。

 最終的にメロロンの抱えているものがどう明かされて、どうなっていくのか、私もまだ分かっていません。物語が進む中で分かっていくことを、かみ砕きながら演じたいと思っています。

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