岡田憲治・専修大学教授

 参院選で参政党を押し上げたものは「推し活」――。政治学者の岡田憲治さんは、本来あるべき政治的な「支持」とはやや異なる有権者の心性と力学を、そこに見いだします。ただ、葛藤や批判とは無縁そうな「推し」の背景には、政治に見捨てられたと感じる人たちの生の声があるとも。参政党の躍進が、日本の民主主義に突きつけた課題とは何でしょう。

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SNSで繰り返し「推し」映像を見れば……

 参院選から見えた参政党現象を読み解くキーワードは「推し」です。支持拡大の大きなツールになった動画共有サイトやSNSでは、視聴履歴に応じて好みの情報が次々と表示されます。支持者が見たい情報にだけ繰り返し触れ、同好の士とつながり更に「推し愛」を高め、アンチと敵対していく過程は、アイドルやアーティストへの推し活に極めて似ています。報道機関の出口調査を見ても、SNSを重視した層や30代以下に特に参政党が浸透したことが分かります。

 推し活は多くの場合、その対象に「イノセンス(無垢(むく))」を求めます。その意味では、結党まもない政党は清新さがあり、当然ながら政権の座に就いたこともないため、駆け引きや妥協、取引など「不純な政治」と無縁。最初から既成政党にはない魅力があります。ただ、参政党への投票行動は、かつて新興政党が伸長した際と比べても、よりイノセントでナイーブなものを感じます。

 例えば昨年の衆院選で勢力を…

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