つむぐ 被爆者3564人アンケート 秦野芙美子さん(89)
大分市の秦野芙美子さん(89)はこの春、自身の誕生日を祝うために集まった息子や孫に、初めて自らの口で被爆体験を伝えた。「いま言わなきゃ駄目だと思ったんですよね」。遠い記憶をたどりながら、ゆっくりと言葉にかえた。
長崎市で生まれた。父・吉夫さんと母・君子さん、弟妹の5人家族。父は三菱重工の造船所近くで料理屋を営んでいた。「店はたくさんの職工さんでにぎわっていて、父や母は笑顔で働いていました」
【3社合同企画】つむぐ 被爆者3564人アンケート
原爆投下から80年。朝日新聞、中国新聞、長崎新聞の3社は合同でアンケートを行いました。被爆者たちが私たちへ託した言葉をみる。
- 【詳報】被爆80年、アンケートに託された3564人の思い
1945年8月9日は母や弟と爆心地から4キロの知人宅を訪れていた。縁側に出ようとしたときだった。爆音とともに閃光(せんこう)が差し、目の前がガラスの破片まみれになっていた。母や弟と防空壕(ぼうくうごう)に逃げ込んだ。
しばらくして外に出ると、け…