【ニュートンから】天文を愛した文学者たち(2)

天文を愛した文学者たち

二人目の文学者は,伊与原 新さんだ。伊与原さんは『藍を継ぐ海』で2025年1月に第172回直木三十五賞を受賞した。伊与原さんはデビュー以来,天文学や地球科学,気象,古生物学などの科学を題材にした作品を数多く発表している。

読書をきっかけに 科学の道を進んだ

 伊与原さんは,地球物理学の研究者としての経歴をもつ。研究者としては世界各地の岩石を採取し,過去の地球磁場の強度を調べていた。2008年に「ミステリー小説の核になりそうなトリックを思いつき」,小説の執筆に取り組むようになった。

 伊与原さんが幼少期に科学に興味をもつきっかけとなったものは本だった。マンガの『ドラえもん』や天文学者であり作家でもあるアメリカのカール・セーガン(1934~1996)がしるした書籍である『コスモス』などが好きだったという。そして科学雑誌『ニュートン』からも影響を受けたという。高校生のころにプレートテクトニクスに関する本と出会ったことをきっかけに,地球物理学の道に進むことになった。

天文学の知識を混じえて ストーリーが展開する

 伊与原さんは初期の作品では研究現場の人間模様の物語を多くえがいていたが,徐々に日常の出来事などをえがくようになった。2018年に発表した「月まで三キロ」では,月に関する科学的知識を混じえながら,人生に行きづまった男とタクシー運転手の話を展開している。

 2022年に発表した『オオ…

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