【ニュートンから】科学と倫理の交差点(2)

 功利主義と義務論のちがいを,有名な倫理的問題である「トロッコ問題(トロリー問題)」で見てみましょう。制御不能になり暴走するトロッコの線路上には,複数の作業員がいて,そのまま進むとトロッコと衝突してその人たちが死んでしまいます。一方,あなたが線路を切りかえれば,切りかえた先の線路上にいる1人の作業員が死んでしまいます。あなたは線路を切りかえるべきでしょうか?─これが古典的なトロッコ問題です。状況設定や人数については多少変わることがあり,近年ではトロッコを自動運転車に置きかえて考えられることがあります。

有名な倫理的問題である「トロッコ問題(トロリー問題)」の例です。

 功利主義で考えれば,複数人を助けるために線路を切りかえて1人に犠牲になってもらうことが正しいことになります。一方,義務論の立場をとれば,たとえ複数人を助けるためとはいえ,何もしなければ死ぬこともなかった1人を犠牲にすることは許されないため,線路を切りかえないほうが正しいと考えます。

幸福と不幸の量はどちらが多くなるか

 同性カップルの子どもの問題をまずは功利主義の視点から考えてみましょう。同性カップルの子どもを認めることで,社会全体の幸福(利益)と不幸(不利益)のどちらが多くなるでしょうか。同性カップルも子どもがつくれるようになると,まずは子どもが得られた同性カップルが幸せになるでしょう。さらに子どもの総数がふえることで,税収など(社会の利益)もふえる可能性があります。

 一方,同性カップルの子ども…

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