亡くなった夫の時計をいつも身につけている。自分が夫に贈った時計だった

 富山県滑川市の市立中学校で理科を担当していた当時40代の男性教諭は、授業と子どもが大好きだった。

 妻と歩いていても、生徒に受粉のしかたを見せるのにツユクサの花はないかと探した。管理職の試験を受けず、一教員として生涯、子どもと関わりたいと言っていた。

 担任をしていたクラスは、やんちゃな男子が多かった。生徒が日々の出来事や思いを書いたノートにコメントを書き、声かけを重ねた。そんな丁寧な対応が、生徒や保護者の信頼を集めた。

 それだけではない。ソフトテニス部の顧問として多忙を極めていた。平日は朝と放課後に練習があり、顧問として指導にあたった。練習後は夜7時過ぎ頃から、授業で使うプリント作りや実験の準備に取りかかった。帰宅後は幼い子どもに本の読み聞かせをし、風呂に入れてから、深夜まで授業研究に取り組んだ。

 公立中学の教員は、多くが部活動の指導に携わってきた。

 文部科学省の2022年度の教員勤務実態調査によると、中学で部活動の顧問をする教員は8割を超えていた。週当たりの活動日数は「5日」が56.1%。日数が多いほど勤務時間が長い傾向も浮かんだ。

 滑川市立中学の男性教諭は、休日は部活の試合や遠征で、しばしばつぶれた。ベテランの顧問が抜けたばかりで休みたくても休めないようだった、と妻は言う。

 「月1回でいいから決まった休みはとれないの?」。妻が聞くと、男性は「子どもが練習したいって言うし……」と言葉を濁したという。

 16年7月の3連休は、初日の早朝から生徒たちを引率して2日間の県大会へ。3日目も練習を指導した。

教員の過労死が後を絶ちません。長時間労働の問題が指摘されて久しい労働環境の改善には、何が必要か。過労をめぐる裁判記録や関係者への取材から、課題を考えます。

 連休明けには、担当する3年…

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