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 高校生や大学生らの就学を支える「奨学金」は、返済義務のある「貸与型」と、返済義務のない「給付型」の大きく二つに分けられる。収入、成績などの要件が付いているものもある。事業の主体も、就学支援を専門で行う独立行政法人や企業など様々だ。

 だが、奨学金にどんな種類があるのか、誰がどのように利用できるか、十分に理解されていない――。そんな実情が、奨学金の情報サイトを運営する「ガクシー(https://gaxi.jp/)」の調査からも浮かび上がった。

 調査は2023年、全国の学生と保護者1100人を対象に行った。奨学金へのイメージは、「借金なので怖い」が48.4%。奨学金を受給していない学生だけでみると70・7%を占めた。

 「給付奨学金自体は知っていたが、多数あることは知らなかった」と回答した人は32.8%。「自分や自分の子どもは対象にならないと思っていた」と回答した人が21.4%だった。「奨学金は借りるものだと思っていた」との回答も全体で16.5%を占め、奨学金を受給していない学生だけでみると84.6%にのぼった。

 ガクシーの担当者は「奨学金の多くはいまだに書類での広報や手続きで、主にSNSが情報源になっている学生たちに情報が行き渡っていない」と話す。

 ガクシーのサイトでは、こうした現状を改善するため、国内の1万6千以上の奨学金を紹介し、「所得制限なし」「成績制限なし」など条件ごとに検索できるようにしている。

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奨学金が検索できるガクシーのサイト。スマホアプリもある

 約27万人が登録。オンライン上で申し込みや面談ができるものもある。今年4月には、検索や応募機能が一体化したスマホのアプリもできた。

 ガクシーは、企業の奨学金事業も支援している。企業によっては、生理用ナプキンの無償配布や、賃貸物件の無償貸し出しなど、自社の商品やサービスを使った、金銭以外の支援も行っているが、あまり知られていない。

 松原良輔代表は「国の財源が限られている以上、まずはさまざまな種類の民間の奨学金が増えていくことが必要だ。企業にとっては将来の日本への投資でもある。学生には自分に合うものを活用してほしい」と話す。

 奨学金を扱う日本学生支援機構(JASSO)は2017年度から、「スカラシップ・アドバイザー」の取り組みを始めた。ファイナンシャルプランナーらが全国の高校や大学などを訪問し、奨学金制度について説明する。

 23年度の訪問は約320件、オンラインによる説明は約150件を重ねた。児童養護施設など、利用のニーズが高いところへも派遣を広げている。

 21年8月からは、よく寄せられる相談を踏まえた奨学金相談サイトを運用し始めた。

 「高校生」「(奨学金を)返還中の人」「学校担当者」など、属性から検索できたり、チャットボットで相談できたりする。22年度には84万件のアクセスがあったという。

演劇経験生かしショート動画も、込めた学生への思い

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水戸さんが動画をオリジナルでつくって配信するYouTubeページ

 大学職員自らが情報発信に取り組む事例もある。札幌大学の水戸康徳さんは、動画投稿サイト「YouTube」に「サツダイ奨学金担当」(https://www.youtube.com/channel/UCJj0UpUvtlxMNbkepizdNZw別ウインドウで開きます)というチャンネルを開設し、発信を続けてきた。

誰もが希望の学びをかなえるためにある奨学金制度。しかし、利用できるはずの制度をよく知らない、制度が難しい、という学生は少なくない。正しく必要な情報を届けるには、何が必要なのか。

 「ゼロからわかる奨学金」「…

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