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「長男には最高の教育を受けさせてきたつもりだった」と女性は話した=2024年3月15日、東京都港区、丘文奈撮影

 偏差値38。小5の長男の成績表を持つ手に力がこもる。すぐにでも成績表を破りたい気持ちだった。

 もう2年も塾に通わせているのに、偏差値は一向に上がらない。

 こんな偏差値を見続けるのはストレス。中学受験をやめると決めて、翌日に塾に退会届を出した。

 「これで、長男は負け組だ」。6年前、40代の女性は本気でそう思っていた。

 かさむ塾代、上がらない偏差値……常に悩みが伴う中学受験。続るのか、やめるのか。どの選択肢も親として勇気がいります。6年前に長男の中学受験をやめた女性に、当時の思いなどを聞きました。

 周囲に富裕層が多い東京都港区在住。大手企業に勤める女性が就職活動をした2000年は就職氷河期で、学歴で苦労する学生を間近に見てきた。

 いい企業に入り、いい収入を得るために、何よりも大事なのは学歴。3歳から英語、水泳、書道、体操教室などの習い事に通わせた。長男が生まれたときから「最高の教育」をしてきたつもりだった。

 小学校も私立を考えたが、女性の仕事が忙しく受験に備えることができなかった。中学受験に狙いを定め、都内でも「名門」と人気の公立小に通わせた。

 小3になると、塾の情報収集に奔走した。特徴を分析し、難関中学の受験に特化した進学塾に入れた。

 「これで一安心」と思ったの…

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