1月17日、ロシア選手に話を聞く好機が巡ってきた。
アンドレイ・ルブレフ(26)がテニスの全豪オープン男子シングルス2回戦でストレート勝ちし、会見場「インタビュールーム3」にやってきた。
【連載】インタビュールーム3 全豪テニスが映した戦争
ウクライナ侵攻の直後からロシアとベラルーシの選手に扉を開いてきたテニス界。表面的な回答になりがちなメインインタビュールームでは語られることが少ない戦争に対する葛藤、迷い、憤り。選手の本音に迫りました。
ルブレフの1回戦はフルセットにもつれる激闘だった。そうした試合の後は、勝負の明暗を分けたポイントなど、試合の中身を軸に聞くのがスポーツライターとしてのマナーだと考えている。
2回戦は快勝で体力の消耗が少ない。心の余裕もある。「すごく良い気分だ。今日の試合は素晴らしかった」。和やかな空気が部屋に流れる中、自画自賛で幕を開けた。
想定通り。これなら、重いテーマでも、機嫌を損ねないかも。
聞き方は幾度もシミュレーションをした。あなたの活躍は把握していますよ、とアピールを入れつつ、でも、なるべく簡潔に。
この日の会見の競争率は高くなかった。記者は10人足らず。それがインタビュールーム3の良さだ。手を挙げると、すぐに当たった。
――あなたが東京オリンピック(五輪)の混合ダブルスで金メダルを獲得したのを覚えている。今年は五輪イヤー。ロシアを代表してでなく、個人資格の中立選手として出場しなければならないのは残念か?
「まだルールが明確でないから、出場できるかはわからない」
国際オリンピック委員会(IOC)は昨年12月、個人資格の「中立選手」として、ロシア、ベラルーシの選手の出場を容認する方針を決めた。国際テニス連盟がそれにならう発表をしたのは3月6日。全豪の時点では結論が出ていなかった。
この時点でルブレフは「我々は締め出されているから、五輪に100%出られる確証はないと思う」と語った。
出られないとしたら理不尽だ、といった感情は伝わってこなかった。出られないなら、それはそれで仕方ない。むしろ、そんなニュアンスを受け取った。
ルブレフは2022年2月のロシアの侵攻当初から、戦争反対を公言する数少ないロシア人プレーヤーだ。
ロシアがウクライナへの全面…