連載「令和のミスター円」(最終回)
歴史的な円安・ドル高に対応するため、政府・日本銀行が巨額の為替介入に踏み切りました。財務官として介入を指揮した「令和のミスター円」こと神田真人氏のインタビューを軸に、介入の裏側を解き明かします。
歴史的な円安・ドル高に対応するため、政府・日本銀行が2022年秋と今年の春夏に計24兆円を超す規模のドル売り円買いの為替介入に踏み切りました。財務官として為替介入を指揮した「令和のミスター円」こと神田真人氏(7月末で財務省を退任、現在は内閣官房参与)に、その舞台裏を聞きました。
――2022年秋と今年春の大型連休、退任直前の7月と、複数回の為替介入を実施しました。どんな経験が生きたのでしょうか。
「マーケットを見るうえで大事なのは、大きな流れのような、パースペクティブ(視座)です。(財務省の)為替市場課で仕事をした20年ほど前から、毎朝7時台に登庁して、いろんなマーケットのチャート、経済指標、イベントを日々確認してきました。為替市場課の総括補佐として、当時は円売りドル買いの大規模介入をおこなった実務経験も、とても貴重なものでした」
「世界銀行の勤務で米ワシントンに6年いたこともあり、各国の当局や中央銀行、ヘッジファンドや投資銀行、国際機関の有力者、学者らと人脈をつくりました。そういった人たちの考えをフォローしたりアップデートしたり。自分で言うのもなんですが、20年間、毎日チャートを見ていた人とか、20年間ずっと海外の当局や特にヘッジファンドを含めてつきあいを続けている人って、そんなにいないのではないでしょうか。そこは強みになった可能性があると思います」
介入の勝敗「分析、作戦と訓練で決する」
――大型連休中、日本の市場が手薄なタイミングを狙った介入もありました。
「アジア開発銀行の総会にASEANプラス3(東南アジア諸国連合と日中韓3カ国)の財務大臣会合、初めて仕掛けた日本と太平洋諸国の財務大臣会合……。ジョージアのトビリシにいて手いっぱいのときでしたが、マーケットを見ていたら、これは無策だと一方的にどんどんいってやばいと。(介入を)やらなきゃいかんし、やれば投機がたまっているから効くな、と。それで直ちに打てと指示をしました」
――介入するその瞬間というより、それまでに米当局などとの準備を整えているからこそできるということですか。
「世界金融の懸案をめぐって…