オーディション番組 アイドル誕生の「沼」
多くの人が熱狂する「アイドルオーディション番組」。「普通の子」がアイドルになれるチャンスを生む一方、問題点も指摘されています。番組出演の経験者はいま、何を思うのか。ファンの熱狂の理由は。インタビューなどを通して追います。
視聴者の投票によってデビューできるメンバーが決まる、アイドルのオーディション番組。パフォーマンスだけではなく、番組内での取り上げられ方やSNSでの話題性といった要素も、投票に大きな影響を与える。白熱したファンの応援は、ときにSNSなどでの誹謗中傷につながることもある。
番組に出演し、デビューに届かなかった参加者はどんな思いでその後を過ごしているのか。昨年、日本のオーディション番組に参加した大阪市の鎌田萌さん(20)に話を聞いた。
韓国の番組見て「新人発掘のチャンス」
――番組では、まずオンラインで出演者のパフォーマンスやレッスンの様子が10回ほど配信され、デビューメンバー11人が決まる最終回はテレビで生放送されました。鎌田さんは応募者約1万4千人の中から約100人の出演者に選ばれたひとりで、番組のなかでは鍛えられたダンスを披露していました。もともとアーティストを目指していたのでしょうか。
中学生のときからダンスをしていて、テレビでBTSのパフォーマンスを見たことがきっかけで、「こんな風に影響を与えられる存在になりたい」とアーティストを目指しました。
本格的に意識するようになったのは、高校1年生のとき。韓国の事務所のオーディション番組に応募をしようと考えたのですが、ダンス部の活動と重なってしまって受けなかったんです。「NiziU」を生んだ「Nizi Project」でした。その後デビューした方たちが活躍しているのを見て、「受ける権利があったのに」と後悔して、心に火が付きました。
そこから色々調べるようになり、月に4、5回以上、色んな事務所のオーディションを受ける生活を6、7年続けました。デビューはできなかったのですが、事務所が決まって上京したこともありました。
――なぜオーディション番組に参加しようと思ったのですか。
もともと韓国のオーディション番組を見ていたので、その日本版が開催される機会を待っていたんです。無名の子でも見つけてもらえる、新人発掘のようなチャンスだと思っていました。
番組に出演するまでにも何度か審査があるので、「絶対出たるぞ」と。オーディション番組では長期間の「合宿」に参加することになるので、昨秋から大学を1年間休学しました。
――番組は、視聴者からの投票総数が4000万票を超える回もあり、注目を集めました。出演したことによる反響はいかがでしたか。
私は出演者50人が落選する1回目の投票で落ちてしまったのですが、番組が終わってインスタグラムのアカウントを開設してから、街中で声をかけられるようになりました。アルバイト先のお客さんでも、「応援していました」といってくださる方もいて、頑張ろうと思える活力になりました。インスタでも、「残ってほしかった」とコメントもついたり。いままで応援してくれるのは身近な友達や家族だったので、全く関わりのなかった方たちが自分のことを見つけて応援してくれるというのは、大きな経験でした。
記事の後半では、参加者への誹謗中傷に感じたことや出演後の葛藤、その中で支えられている存在などについて語ります。
容姿へのコメント ダイエットしたが
――所属事務所などの支援がないなかで大変なこともありましたか。
やっぱりSNSなどでの誹謗中傷は気になりました。
特にインターネットの掲示板…