「子どもができない手術をする。あんたたちみたいのが、子どもをつくったら大変だから」
看護師の言葉に、絶望した。
札幌市に住む小島喜久夫さん(83)は、生後まもなく石狩市の農家に引き取られた。幼いころに小児まひにかかり、右足に障害が残った。複雑な家庭環境のなかで、非行を重ねた。
ある日、家に帰ると警察官が待っていた。強制的に精神科病院へ連れて行かれ、鉄格子のついた独房のような部屋に入れられた。19歳の頃だった。
しばらく経った朝。看護師が言った。「あんたたちみたいのが、子どもをつくったら大変」。麻酔の注射を打たれ、不妊手術を強いられた。
■手術を告げたら、妻は去って…