厳しい人口減少に直面する地方ほど、移住に期待する思いは強い。人口減少率が12年連続全国ワーストの秋田県は、移住のための相談・交流拠点を東京都内に設け、移住や子育てに対する支援金で後押しするが、地理的不利は覆いがたい。自治体間で移住希望者の獲得競争が強まる中、移住を地域の活力につなげる方策はあるのか。
秋田市の北東、山あいの豪雪地にある上小阿仁(かみこあに)村(人口約1800人)は、県内で人口減少率が最も大きいことで知られる。過疎にあらがうように、村民と村それぞれが関係人口を増やす取り組みに力を注いできた。
2012年にあった里山型芸術祭「大地の芸術祭」(新潟県)が飛び地開催され、9千人余が訪れると、その後もアートイベントを継続する。18年には村民有志がNPO法人「こあに食農観応援隊」を立ち上げ、村内のフォトスポットの撮影や、伝統行事「万灯火(まとび)」を紹介するなど、様々な案内ツアーを続けてきた。
来る人は増えた、でも移住には…
NPO理事長の田中安規さん(75)は「村の外から来る人は増えている」と手応えを語る。それでも「移住に結びつくかと言えば難しい。勤める場所、生活費を稼ぐ場所がねえもの」と語る。
移住や子育てには、村ができ…