台湾総統就任からおよそ1カ月が経った6月24日、頼清徳(ライチントー)総統は、記者団を前に厳しい表情を見せていた。

 「(立法院の)権限を恣意的に拡大すべきではない」

 焦点となっていたのは、立法院(国会に相当)の法改正だ。野党が主導する立法院は、政権に対する立法院の監督権限などを強化する法改正を可決していた。

【連載】「海峡のキーパーソン 台湾・頼清徳総統の実像」

中国が「独立派」として警戒する台湾の頼清徳総統が就任して半年を迎えました。そもそも頼氏はなぜ政治を志し、どのような台湾を目指しているのでしょうか。頼氏をよく知る人物への取材を重ねて、実像に迫りました。

 「憲法が定める権力分立と均衡の原則に対するリスクがある」。頼氏はこの改正内容に違憲の疑いがあるとして、憲法法廷に憲法解釈を申請し、法改正を阻止する方針を表明したのだ。立法院が可決した内容に対して、政権が憲法審査を求めるのは異例のことだ。

就任式に臨む(左から)、蔡英文前総統、頼清徳新総統、蕭美琴副総統=2024年5月20日午前9時20分、台北、藤原伸雄撮影

 2期務めた蔡英文(ツァイインウェン)政権を引き継いだ頼政権は、台湾で直接投票による総統選が始まった1996年以降、初めてとなる3期連続の民進党政権だ。ただ、頼氏の得票率は4割にとどまり、立法院で民進党は過半数割れの少数与党でもある。過半数の得票と議席を維持してきた蔡政権とは異なる。

「頑固者」 苦境も譲歩せず

 立法院で野党に押し込まれる…

共有
Exit mobile version