■変容と回帰 コロナ禍と文化
死者を供養する。神に祈りを捧げる。宗教の営みは人が集まるのが前提だが、それをコロナが揺さぶった。影響は続いている。
- コロナ禍で危機に直面した舞台芸術 表現者たちの葛藤と気付き
「葬儀は親族で営んだ」。新聞の訃報(ふほう)欄に、そんな表現が目立つようになった。友人知人を呼ばない小さな葬儀は家族葬と呼ばれ、もともと増える傾向にあった。コロナ禍で拍車がかかったようだ。
終活関連メディアを運営する鎌倉新書は隔年で、喪主を経験した人に葬儀の形態を聞いている。コロナ禍の2022年には家族葬が55%となり、一般葬の25%を上回った。葬儀をせずに火葬のみ行う直葬も増え、11%に。コロナの収束に伴い、24年の調査では一般葬が少し増えたが、戻りきってはいない。
「10年かけて進むはずの簡素化が、1~2年で来てしまった」。そう語るのは、寺院運営のコンサルタントをしている薄井秀夫・寺院デザイン代表だ。
薄井さんによると、日本の葬儀は地域の人たちが取り仕切るのが習わしだったが、1960年代には薄れていた。そこをある程度補ったのが会社で、社員が同僚の父母の葬儀に参列し、手伝うこともあった。それも廃れてきたところにコロナが襲った。
「お寺は地域コミュニティー…