瀧口辰典さんの手記や樋上典子さんの話をもとに、中学生が描いた絵。樋上さんの授業でも使われている=樋上さん提供

 《薄ピンク色の閃光(せんこう)が教室のガラス窓に光った。次の瞬間、呼吸が止まるようなと言うか、胸が張り裂けるような感じがした》

 東京都足立区立中学校で今年7月、ある被爆者の手記が読み上げられた。3年生に向かって語りかけるのは保健体育科講師の樋上典子さん(67)。手記は典子さんの父・瀧口辰典さんが書いたものだ。

 スクリーンには、過去に典子さんの教え子が手記の場面をイメージして描いた絵も映し出された。素朴な絵が紙芝居のような雰囲気を出し、生徒たちは朗読に引き込まれていく――。

登校中の友人、人相がわからぬ程に

 辰典さんは80年前、旧制広島市立工業専門学校に通っていた。毎朝早く登校しており、原爆が落ちたときは教室にいた。窓ガラスの破片で額を切ったものの、大きなけがはなかった。

旧制広島市立工業専門学校に通っていた頃の瀧口辰典さん(左から2人目)=樋上典子さん提供

 しかし、登校中だった友人た…

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