Smiley face

 大麻の香りが鼻につく路地裏を抜けると、ヒップホップの重低音に合わせて若い男女が体を揺らしていた。サイケデリックな光を放つネオンが、街角の落書きを照らす。

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 南アフリカの最大都市ヨハネスブルクの繁華街には、国内外から職を求める若者たちが集まってくる。その路上では、夢物語のようなもうけ話や、性暴力や違法な売春、薬物の売買が繰り広げられている。広大なアフリカ大陸で、最もきらびやかで、危険な街の一つだ。

南アフリカの最大都市ヨハネスブルク中心部には国内外から若者たちが集まる。活気あふれる街は、ときに性暴力の現場となる=2024年6月11日、今泉奏撮影

 騒がしい街から、車で10分もしない住宅地の一角に、性暴力から逃れてきた女性のための保護施設「フリダ・ハートリー・シェルター」がある。「この街で女性たちは孤立無援だ。レイプや殺人があっても、たいていはニュースにならない」。シェリル・ラバネ所長は、そう明かす。

 南アで起きるフェミサイド(女性が標的の殺人)は、世界平均の5倍で、2時間半に1人の女性が殺されている計算になる。人口10万人あたりの国内のレイプ被害は、警察が認知しているだけでも世界平均の5倍、日本の10倍を超える。レイプに限らず、ジェンダーに基づく暴力(GBV)は、路上だけでなく、家庭内でも深刻だ。

ジェンダーギャップの世界ランクで、南アフリカは日本の100位上の18位となっています。女性議員は4割を超え、女性を守るための法律も多い。それなのに、なぜ性暴力が相次ぐのでしょうか。その理由を探ります。

写真・図版
女性のための保護施設「フリダ・ハートリー・シェルター」を覆うフェンス。保護された女性をめぐり、施設関係者が男性からの攻撃を受けることもあるという=2024年6月13日、ヨハネスブルク、今泉奏撮影

■路上に放り出される女性たち…

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