イチローさんは現役時代、「名人」がつくったバットを使い続けた。2人を引き合わせたのは、オリックス時代の先輩選手だ。
「スーパースターになる人には、そのための出会いがあるのかなと思う」
1990年代にオリックスで活躍し、95、96年のリーグ連覇を経験した小川博文さん(57)=現・社会人野球サムティ監督=は、イチローさんについて、そう振り返る。イチローさんと名人との出会いも、小川さんのふとした一言がきっかけだった。
1993年のオフ。
当時、イチローさんは、まだ「イチロー」と呼ばれるようになる前。鈴木一朗としてプロ2年目を終えたばかりだった。1軍出場は43試合。1年目から3試合増えたが、1軍と2軍を行ったり来たり、そんな選手だった。
「ミズノを使っているなら、行く?」
小川さんは毎年シーズンが終…