Smiley face
写真・図版
イラスト・米澤章憲

 「家族につらい思いをさせていました」。首都圏に住む男性(59)は最近、「不機嫌ハラスメント(フキハラ)」の記事を読み、家族に対するこれまでの行動から「もしかしたら自分も……」と思うに至った。

 なぜ、不機嫌を家族に向けてしまっていたのか。それをぶつけられた相手は、どう考えていたのか――。男性と妻(58)、それぞれの視点から振り返った。

  • 「なんで私ばかりが…」 夫へのフキハラ、やめられぬ専業主婦の無念

     ◇

「やっぱり、僕がやらないと」家事に余裕なくす夫

 2人が夫婦になって、34年が経つ。会社の同期で、恋愛結婚だった。

 男性はもともと神経質なところがあり、いつも家の中が整理されていないと気が済まない。どんなに忙しくても、水回りの掃除や部屋の拭き掃除、洗濯などは欠かさなかった。

 妻はどちらかというとおっとりしている。料理や家事全般を手掛けるが、「ムリしてまで」というタイプではない。そこが自分との違いだった。

 それは時に、ストレスを生んだ。仕事から戻り、部屋の整い方が自分なりの「基準」に達していなければウンザリし、「やっぱり、僕が掃除しないとダメだ」と思い詰めてしまう。

 休日もそう。仕事がないので、心ゆくまで掃除に打ち込めると思っていたところに、急な用事などで「計画」が崩れると、そこでまた心の余裕をなくしてしまう。

 そんなとき、頭では冷静にと分かってはいても、つい態度に出てしまう。掃除機をかけながら、「あぁー、もう」と大きな声を出したり、食器をガチャンと音を立てて置いてしまったり。一度イライラし出すとどうにも出来ず、不機嫌が数時間にわたることもあり、食事や睡眠といったポイントがないと、なかなか切り替えられなかった。

 娘が生まれてからしばらくの間、妻は育児に専念するため専業主婦になった。子どもの世話に追われていたこともあり、家の中が片付かない日もあった。ある時は、ママ友たちを家に呼んだまま遅くまで話し込んでいたのが気になった。深い意味はなかったが、つい「専業主婦としての自覚と誇りを」と口走ってしまった。

不機嫌の罪深さ、痛感した出来事

 その後しばらくして、中学生…

共有