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神奈川県立保健福祉大学の津野香奈美准教授

 教育や研究の現場において優位な立場にある教員が、学生に嫌がらせをする「アカデミックハラスメント」。被害者が周囲に助けを求めても、適切に対応されないことも多い。なぜこうした構造が生まれるのか。ハラスメントを専門とする神奈川県立保健福祉大准教授の津野香奈美さんに聞いた。

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 ――「アカハラ」とはそもそも、何を指すのですか。

 パワハラやセクハラ、マタハラなど、大学や研究所で起こるハラスメント全般を指します。ただ、国が法律上、定めているパワハラは、あくまでも労働者に対して行われる、職場での優越的な関係を背景とした言動です。学生は雇用されているわけではないので、教員から学生に対して行われる行為は、基本的にはパワハラに該当しません。学生を守る法律的な根拠はないのが現状です。

 ――アカハラが起こる背景には何があるのでしょう。

 教授が持つパワーの強さが、大学がハラスメントの温床になりやすい一つの要因です。教授をトップに、准教授などが下につく講座制を敷く大学は、中小企業の経営者がたくさん集まっているイメージです。教授のさじ加減ひとつで、研究費の使い方や海外出張者が決まるなど、裁量権が大きいのが特徴です。

 ――教授は企業の上司とは異なるのですか。

 たとえば営業の売り上げ成績がいい人が上司になった場合、部下の指導能力もあるかどうかは別問題ですよね。その点は企業も大学も変わりません。

 しかし、大学は高い研究競争力が求められる分、多額の研究費を獲得できる人、論文を書ける人を置いておかなくてはなりません。ハラスメントが起きた時に、大学の看板となる研究業績を持つ人を解雇したり、厳しい処分を与えたりする動機は、企業に比べると薄いと言えます。

 そのため、学生からの訴えをうやむやにされた、という話も聞きます。研究者は専門性が高く、代えがきかないことも、構造的にハラスメントの温床になりやすいのでしょう。

 ――どういう人が、ハラスメントを起こしやすいのですか。

 ハラスメントをする人は、コ…

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