全国で空き家が増加する一方、古い家のリノベーション(改修)にも関心が高まっている。武庫川女子大学(兵庫県西宮市)は、キャンパスに隣接する1軒の古い住宅を買い取り、「暮らしのラボ」と名付けて活用する。
「暮らしのラボ」には天井をなくして屋根裏をむき出しにした部分や、床を外して土台が見えるようにした部分がある。学生らが家の構造を見ながら設計やインテリアを学ぶためだ。
築50年以上の家なので、マンションや新しい一軒家で育った若い学生には、見慣れないものもあるようだ。土間からの段差が高い玄関、床まである木製の掃き出し窓、窓の外にある雨戸に戸袋……。「そういうのを知ってもらうのも目的の一つです」と、生活環境学科の山田由美准教授は言う。
4月からは約10人の学生が、暗い印象の和室を明るく洋風にする改修に取り組んだ。コンセプトは「女性がホームセンターで買える道具や建材でするDIY」。
中心になったのは、大学院生の前田果歩さん。1級建築士を目指す前田さんにとって、工事のプランを練り、図面を描き、作業者に指示をする過程は、資格取得に必要な「実務経験」の一部でもある。
和室に並ぶ照明器具も前田さんがデザインした。ただ、本格的な改修作業は初めて。土壁の上から珪藻土(けいそうど)を塗る作業が特に楽しかったという。
力仕事などで苦労もしたが、女性だけでやったという達成感も得た。「建築現場では、男子が中心になりがちだけど、そこは女子大ならでは。女の子がリーダーシップを発揮し、それぞれの持ち場でがんばっている姿を間近で見られたのも良かった」と言う。
大学によると、エアコンの冷暖房効率の比較や、照明やカーテンの効果の検証など、快適な住環境に関する勉強にも「ラボ」を活用する予定だという。
生活環境学科は、卒業後に住宅メーカーや改修を手がける工務店などに就職する学生が多いそうだ。ここで学んだ卒業生が、各地で深刻化する空き家の問題の解決にも、力を発揮してくれるかもしれない。(浅倉拓也)