塩野義製薬が12日発表した2025年3月期決算は、売上高が前年比0.7%増の4382億円、本業のもうけを示す営業利益は同2.1%増の1566億円、純利益は同5.2%増の1704億円だった。前年に比べ、コロナウイルス感染症やインフルエンザの流行が下火で、これらの治療薬など関連製品の販売が減ったが、開発したエイズウイルス(HIV)治療薬の特許料が増え、収益を押し上げた。
売り上げのうち、国内は大幅に減り、前年の1511億円から988億円になった。主な要因は感染症が前年ほど流行せず、コロナの治療薬「ゾコーバ」やインフルエンザの治療薬「ゾフルーザ」など関連の製品全体で200億円ほど減った。このほか、前年は注意欠如・多動性障害(ADHD)の治療薬の販売を他社に売り渡し、一時的に250億円の売り上げがあった。
屋台骨を支えるのは、HIV治療薬の特許料と販売する会社からの配当だ。特許料は2404億円と配当は403億円を合わせた2807億円で、売り上げ全体の6割を超える。手代木功社長は12日の会見で「今後も伸びる」と話した。
トランプ米大統領は12日午前(日本時間同日深夜)、米国内の薬の価格を引き下げるための大統領令に署名した。塩野義製薬のHIV治療薬の売り上げは、米国が6割を占めるとされ、業績への影響も懸念される。
事前の報道を受けて、手代木社長は「きょう(12日)の朝聞いたばかりで、現時点ではインテリジェントな(気が利いた)コメントをできるような状況にはないというのが正直なところ」と話した。その上で、「ビジネスをどう見ていくのか難しくなっている中で、現時点では影響をいろいろな方とお話しさせていただきながら、今年度のビジネスはどうなるかということをはかっていくしかない」と答えた。