記者解説 アメリカ総局長・望月洋嗣
6月27日、民主党のバイデン大統領と共和党の候補になるトランプ前大統領が、今回の選挙戦で初のテレビ討論会に臨んだ。混乱回避のため無観客で実施され、握手もせず互いを「史上最低の大統領」と非難。批判と中傷に支配された議論は、分断のなかで混迷を深める米国政治を象徴するかのようだった。
前回の大統領選でも激しく争った2人の状況は、この4年間で大きく変わった。バイデン氏は前回、トランプ氏の新型コロナウイルス対応などを突いた。今回は現職としてインフレや不法移民対策などで批判される側に立つ。
一方、トランプ氏は四つの刑事裁判で91もの罪に問われる。元ポルノ女優への「口止め料」支払いを隠すため業務記録を偽造したとして、大統領経験者として初の有罪評決を5月末に受けた。
132年ぶりとなる2大政党の現職と前職との戦いで優位に立つのはトランプ氏だ。有罪評決は支持率に大きな影響を及ぼさず、刑事訴追を「魔女狩り」だとみる支持者を奮起させた。
ポイント
米大統領選では有罪のトランプ氏が、インフレ批判を浴びるバイデン氏をリードする。「どちらも不支持」の有権者が過去最多になり、独立系候補がどう動くのかも焦点だ。政権交代なら米国の民主主義や外交・安保の大転換となり世界に大きな影響を与える。
4年前のこの時期、バイデン…