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薬院米穀店に掲げられる「閉店」の看板。「たしろ米穀店」は一時期使われていた店名という=2025年6月13日午後3時13分、福岡市中央区薬院2丁目、根元紀理子撮影
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 コメ不足から価格高騰、そして備蓄米の放出。コメを取り巻く環境がめまぐるしく変わる中、創業90年余りの老舗米穀店がひっそりと店を閉じた。元店主の目に映った「令和の米騒動」とは。

 九州随一の繁華街・天神近くの落ち着いた街並みの一角。薬院米穀店(福岡市中央区)のシャッターに、「閉店」の2文字が貼られたのは4月末のことだった。

 1934(昭和9)年創業。戦時中は物資の配給所に形を変えながらも、この地でずっと商いを続けてきた。

 取引先は地元の飲食店が多い。「自社での精米にこだわってきた」。それぞれの注文に合わせ、銘柄米を玄米からブレンドして提供した。

 米穀店はただでさえ「薄利多売」だ。その経営を厳しくしたのが、コメの価格高騰だった。

 玄米の仕入れ値はこの1年で約2倍になったが、長年の顧客に高騰した価格で売ることはできず、従来の価格で提供を続けた。ついには仕入れ値が売値を超えるようになり、売れば売るほど赤字になった。

仕入れ値上がっても売値変えず…

 2代目店主の田代利平さん(77)は「利益すれすれでやってきたけど、とうとう昔からの取引先に米を送れなくなった」。昨夏ごろから、徐々に取引先を減らしていった。長年の顧客から「どうにかコメを提供してほしい」と懇願された。それでも代わりの米穀店を紹介して、断るしかなかった。

 「(コメをめぐる)情勢にふりまわされて、もう疲れてしまった」

 店を畳む米穀店は相次いでい…

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