大鉄・青部駅に久しぶりに到着した列車を住民たちが撮影していた=2024年11月23日午前9時29分、静岡県川根本町

 2022年9月の台風15号で被災し、一部区間が不通になっている大井川鉄道(大鉄)の大井川本線。不通区間のうち、静岡県川根本町の千頭―青部間(3.4キロ)で23日、約2年ぶりに列車が走った。全線復旧を願う住民らが企画したイベントに合わせたものだ。

 大井川本線は現在、川根温泉笹間渡―千頭の19.5キロで線路に土砂が流入するなどして不通が続いていた。この区間を列車が走るのは不通となって初めて。大鉄は数カ月前から準備を進め、国や中部電力などと調整したほか、線路の周りの草を刈ったり、機器類を整備したりした。

 この日は、比較的被害が小さかった千頭―青部間を、ふだんは大鉄井川線を走るディーゼル機関車と客車1両が試運転列車として1往復した。青部駅では数時間ホームに停車し、客車の内部が一般に公開された。乗客を乗せた運転はされなかったが、列車の前で記念撮影する人たちでにぎわった。

 青部駅に隣接する広場では、住民らが「青部駅マルシェ」と題し、地元の農産物や総菜などを売る催しを開いた。マルシェに訪れた同町の主婦(58)は「この駅に列車がくるのは久しぶりなのでうれしかった。早く全線復旧して欲しい」と話した。

 イベントを企画した団体の一つ、「大井川鉄道全線復旧を支援する会」の山口捷彦会長は「とにかく一つの駅だけでも、1年に1回でも列車が走ったのはありがたい。住民の復旧への願いを示すことができた」と話した。支援する会では、全線復旧に向けた署名をこれまで4万筆超集め県などに提出した。マルシェ会場でも、署名や募金を呼びかけた。

 会場を訪れた大鉄の鳥塚亮社長は「現在は列車がきていないのに、住民が駅や鉄道への愛着を持ってイベントを催してもらえるのはありがたいことだ」と感謝を示した。(林国広)

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