「祇園御本地」の山鉾行列図(部分)。はしごや臼を載せた牛車が描かれる=京都府立京都学・歴彩館「京の記憶アーカイブ」から

 疫病退散を願い、平安時代の869年に始まった京都・祇園祭には謎が多い。たとえば、長いはしごと臼を積んだ荷車をひく牛――。江戸時代初期の山鉾(やまほこ)巡行を描いた資料によく出てくるが、長年「なぜ、臼?」と不思議がられていた。その謎に迫る研究が発表され、にわかに注目を集めている。

 大はしごと臼と牛車は、ほぼ必ずセットで登場する。江戸初期に刊行された「祇園御本地」や、慶長期のものとされる「祇園祭礼図屛風(びょうぶ)」(洛中洛外図)も山鉾の後方に描かれていた。だが、現在の祇園祭には跡形もなく、文献資料もないため、使い道は見当がつかなかった。

 そんな中、元大学教授で、「全国山・鉾・屋台保存連合会」顧問の植木行宣さんが昨年、「辻回しで使われたのでは」とする論文を発表した。

 巨大な山鉾が交差点で90度方向転換する「辻回し」は、山鉾巡行の見せ場の一つ。今は青竹を敷き、水をかけ、その上に前輪をのせて滑らせながら回転させる。ただ、その作法は時代によって変化し続けている。

 植木さんによると、江戸初期…

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