環境省レッドリストで絶滅危惧Ⅱ類に指定されているコアジサシ(カモメ科アジサシ類)が、奈良市・平城宮跡南側の積水化学工業工場跡地で繁殖しているのが確認された。観察を続けている奈良教育大学自然環境教育センターの研究部員、岡口晃子さんによると、今シーズンで6年連続。「都市で奇跡的に残された環境」としており、保全の必要性を指摘している。
コアジサシは、日本では本州以南に飛来する夏鳥。岡口さんは今年4月17日、平城宮跡歴史公園の北側にある水上池で飛来を確認。5~6月に工場跡地で抱卵、孵化(ふか)が見られ、7月までに23羽が誕生して巣立っていった。巣立ったひなや卵の数から算出する巣立ち成功率は88%。過去5年間の平均も57%と高く、全国で繁殖の失敗が相次ぐなか「極めて良好な例」という。
未整備の工場跡地がなぜ安定した繁殖地になっているのかについて、岡口さんは「見渡しが良い砂礫(されき)地である」ことと、「えさの小魚が捕れる溜め池が近い」ことを挙げる。
鳥類だけでも22種
親鳥が最も警戒するのは、ひ…