茨城県では救急車で大病院に運ばれたとき、緊急性が認められなければ、選定療養費が請求される仕組みが始まった

 救急車を利用したときに緊急性がないと判断されれば、病院が「料金」を請求する仕組みは是か非か――。9月7日に投開票される茨城県知事選でそんな論戦が起こっている。

 県は昨年12月、紹介状なしで大規模病院を受診した際に徴収する「選定療養費」を、救急搬送された患者にも適用する制度を導入した。

 救急車で運ばれてきた軽症患者から選定療養費を取ることは厚生労働省が認めており、同様の制度は三重県松阪市でも実施されているが、都道府県単位で導入したのは全国初だ。

有識者会議「慎重な議論が必要」

 ただ、総務省消防庁で検討されたものの、「生活困窮者が要請を躊躇(ちゅうちょ)する」「有料・無料の区別・判断が難しい」といった指摘もあり、2016年には有識者会議が「慎重な議論が必要」と結論づけた経緯もある。

 知事選に無所属で立候補した現職の大井川和彦氏(61)=自民・国民民主・公明推薦=は8月の記者会見で2期8年の成果を問われると、この制度を挙げて胸を張った。

 「批判されるのは確実だから、普通の知事はやらない。でも、正しいと信じたものを一歩前に進めるのが、私の仕事の仕方だ」

 茨城県によると、24年の搬送件数は前年比で2133件増え、過去最多の14万5179件(速報値)。全体の4割超を軽症患者が占め、救急搬送困難事案は約8800件にのぼった。

 大井川氏は「救急車が無料のタクシー代わりになっている現状はかなり憂慮すべきで、歯止めも必要」と主張する。

 これに対し、無所属で茨城大名誉教授の田中重博氏(78)=共産推薦=は「金で命に格差をつけ、貧乏人は救急車を呼ぶなということだ」と批判し、制度撤廃を公約に掲げる。

 一方、無所属で元警備会社員の内田正彦氏(51)は「安易な理由で救急車を呼ぶ人が多い」として賛成の立場だ。

県は「必要な制度」、有権者は…

 県によると、制度スタートか…

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