佐倉編物研究所長の伊藤直孝さん

 編み物は、数学的視点で見るとおもしろいんです!――東京大学で化学を学んだのち「編み物男子」として身を立てることにした、伊藤直孝・佐倉編物研究所長に「編み物ブーム」の背景を聞きました。

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 「ニッターズハイ」という言葉をご存じですか? ランナーズハイ――ランニング中に苦しさが薄れ、そのままずっと走り続けられるような陶酔状態に陥る――と似た現象が、編み物でも起き得るんです。

 僕は高校の陸上部出身でフルマラソンも経験しましたが、黙々とリズムをもって体を動かすところは確かに似ている。デジタルデトックスにもなるので、心がざわざわした時は編み針や毛糸を持つという人、多いです。

 昔は手編みのセーターなんて贈ると「重い」と言われたものですが、一周回って若い人には新鮮みたい。ブームの火付け役は、韓国の人気アイドルと言われますが、「影の主役」はやはり100円ショップでしょう。一昔前は粗悪な毛糸も多かったですが、最近は「これが100円?」と驚かされます。それから動画投稿サイト。文字や写真では伝えにくい技術を何度でも確認できますから。

 僕が編み物を始めたのは11…

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