(6日、第107回全国高校野球選手権兵庫大会1回戦 宝塚4―0明石北)
直球とカーブ。持ち球は二つだけ。それでも、相手打線のバットはくるくると回った。
「球種が多いと精度が落ちる。変化球に頼りたくない」。明石北の山本陽央投手(3年)は、緩急をつけた投球で、九つの三振を奪った。
試合中、マウンド上やベンチ前で、腕の振りを何度も確認した。小学生の頃に父から教わった「空手チョップ」の動作だ。カーブの変化を修正できるといい、これが「僕の原点」という。
昨秋はエースナンバーをつけたが、春は別の選手にその座を明け渡した。制球力が課題で、ストライクが10球入るまでと決めて、1日に300球近く投げ込んだこともあった。
外角低めの直球と、縦に大きく落ちるカーブ。「追い込んだ時に三振がとれるのがエースだ」。空手チョップで腕の振りを確認しながら投げ込み、再び背番号1をつけて、この夏に挑んだ。
この日は六回にカーブが浮き、2点適時二塁打を打たれた。打線の援護を待ったがチームは負けた。「あの1球が悔しい」
それでも「今まで怒られてばっかりで納得のいく投球ができたことはなかったが、直球とカーブで三振をたくさんとることができた。今までやってきたことをやりきれた」。充実した顔だった。