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鶴岡東―聖光学院 ピンチの場面でマウンドに集まる聖光学院の選手たち=金居達朗撮影

 19度目となる夏の甲子園に出場した聖光学院は初戦で敗退した。県大会レベルでは2021年秋以降、無敗の「絶対王者」だが、全国の壁は高かった。

 相手は同じ東北勢で、よく練習試合をする鶴岡東(山形)。エースはU18日本代表候補にも選ばれた左腕・桜井椿稀(つばき)投手で、手ごわいことは十分に分かっていた。前日まで打撃練習で入念に左対策をして臨んだ。

 しかし、序盤から「定石」に狂いが生じる。無死から安打で二度、先頭打者が出塁するものの、犠打の失敗が続いて送れない。多彩な変化球を繰り出す桜井投手に、確実に得点につなげる自分たちの野球が封じられた。斎藤智也監督は試合後、「バントで送る形をしっかりつくれなかった」と振り返った。

 「県内無双」状態の聖光学院だが、今年のチームは紆余(うよ)曲折があった。新チーム発足後は絶対的な支柱がおらず、主将が4度交代。夏前になってもまとまりを欠いていた。

 そこで奮起したのがベンチ外の選手たちだった。試合に出る可能性は低くても練習では全力疾走。打撃練習のトス上げをする際、名前を大声で連呼して叱咤した選手も。そんな姿を見て、「レギュラー陣は自覚を促された」と佐藤羅天(らま)主将(3年)は言う。「彼らのためにも絶対に負けられない」と覚悟を決めた。

 福島大会ではスタンドの必死の応援が伝わり、グラウンドの選手が目をうるませる場面も。突出した選手がいるわけではないが、こうしたベンチとスタンドの一体感が聖光学院の強みであり、福島大会を勝ち抜く原動力にもなった。

 福島大会の決勝、甲子園と力投をみせたエース高野結羽(ゆう)投手(3年)、甲子園入り後も新たな変化球を習得した古宇田(こうた)烈投手(3年)と、最後まで成長を続ける選手らの姿は素晴らしかった。

 チームには唯一2年生でベンチ入りして主軸を担った菊地政善選手が残る。甲子園では快音を響かせられなかった。その悔しさを胸に新チームを引っ張り、再び福島の頂き、その先を目指してもらいたい。

 県内の他チームは打倒聖光学院で挑んでくるだろう。県内チーム同士がさらに切磋琢磨(せっさたくま)し、福島全体のレベル底上げをはかってほしい。(酒本友紀子)

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