医師は肺がんに気づけたはずの胸のエックス線画像を見忘れた。患者は1年後に知らされた。肺がんは末期だった。早く見つけられなかったのか。患者の苦痛は、医師を信じ切っていた自身を責める気持ちも重なり、消えることはない。
患者の女性(65)らが愛知国際病院(愛知県日進市)側に損害賠償を求めた裁判で、名古屋地裁は3月下旬、医師が2019年に肺がんを疑える画像の読影(診断)を怠った過失を認め、病院側に300万円(弁護士費用を除く)の支払いを命じた。
この見忘れは、裁判になる前から、病院側が認めていた。医師は24年春の法廷で、がん治療で弱り、車いすに座る女性に「心が張り裂けるような思い」と謝り、何度も頭を下げた。
女性が明らかにしたかったのは、医師が19年より前、遅くとも18年には肺がんを疑えたのではないか、ということだ。18年の診療録に肺を診た記載はなかった。
この病院の整形外科で07年…