南海トラフ巨大地震のような広範囲に被害が及ぶ災害の場合、浸水や通信の断絶で、孤立する福祉施設が続出する可能性がある。ライフラインが止まり、職員も限られるなか、どう機能を維持していけばいいのか。能登半島地震の事例から考える。
天井は落ち、壁は割れ、壊れたスプリンクラーから水が噴き出していた。
昨年1月1日の能登半島地震で、石川県能登町の特別養護老人ホーム「こすもす」では震度6弱の揺れに見舞われた。居室がある2階と3階は損傷が大きく、余震が続くなか、さらに被害が拡大するおそれがあったため、入所者108人をすべて1階に移動させた。エレベーターは止まっていたので階段を使い、機能訓練室やデイルーム、廊下にマットを並べ、雑魚寝してもらった。停電していたが、非常用発電機を活用し、調理はできた。空調やストーブも使えた。
毎年元日はお餅を食べることになっていて、のどにつまらせないよう、この日も普段より多くの職員が出勤していた。地震が起きた午後4時過ぎは、早番の職員もまだ数人残っていて、人手はあった。理事長の紙谷靖博さん(71)は「(地震が)真夜中だったらぞっとする」と振り返る。
一番の懸案は水だった。地震…