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ツインブリッジのとの能登島側の入口には、その日の来町車両数を示す電光掲示板が設置されている=2025年6月16日午後1時11分、石川県七尾市能登島通町、杜宇萱撮影

 石川県の七尾湾に浮かぶ能登島と半島本土を結ぶ「ツインブリッジのと(中能登農道橋)」が16日、昨年の能登半島地震以来約1年半ぶりに通行できるようになった。半島との行き来が約6キロ離れた能登島大橋に限られていた状況から一歩前進した。島の人たちは、物理的な距離だけでなく「心の距離」が縮まることも期待する。

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 七尾市によると、周囲約72キロの能登島には2200人ほどが暮らす。ツインブリッジのと(620メートル)は、島の西端付近と半島の七尾市中島町とをつなぐ。肉眼でも海越しに陸地が見える距離だが、地震で橋に段差が生じたり、亀裂が走ったりして通行止めが続いていた。

 この日午後1時、通行止めの看板が外されると、車が行き交い始めた。同市能登島通町の漁師、山本吉昌さん(77)は、三ケ浦漁港の自身の漁船から橋を見つめていた。「ここではほとんどの家が中島町に親戚や友人をもつ。うちの孫も住んでいて、これからはもっと会いに行きやすくなるわ」と笑顔を見せた。

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漁師の山本吉昌さんは、自身の漁船から開通したばかりのツインブリッジのとを見つめていた=2025年6月16日午後2時15分、石川県七尾市能登島通町、杜宇萱撮影

 別の漁師の男性(58)は「待ちに待った」としみじみと語った。中島町へは、船の燃料の買い出しなどで毎週行く必要がある。橋のすぐ近くに住み、地震前は片道10分ほどだったが、通行止めでは島南端の能登島大橋を使うしかなく、約30分かかっていたという。

 「時間が延びただけじゃない。気軽に会えた距離感が、考えて行動しなければならない距離になった。日々の小さな不便が積み重なると、気持ちにも負担がかかる」と明かす。「中島の行きつけの居酒屋に『やっと来たぞ』って言いに行くわ」

 島で農業を営む70代男性は…

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