「うーん」
そううなってから、こう言う。
「何のために『輝宮夜(かぐや)』やってるか、分からへん」
明浄学院高校(大阪)吹奏楽部の練習で、総監督の小野川昭博さん(62)と、部員たちの問答が始まった。
「思いつく言葉とか、ある?」
小野川さんから問いかけられたのは、フルートの蔭本響月(ひびき)さん(3年)。コンクールで演奏する自由曲「白磁の月の輝宮夜」で冒頭のソロを吹く。
蔭本さんが答える。
「かぐや姫の伝説なので、竹が光って誕生する場面を表していると思います」
小野川さんが重ねる。
「なるほど、誕生するところなんや。ほな、その次は?」
「天からの『育てなさい』というメッセージ」
「物語もいいけど、どんな感じで演奏する?」 「この世には存在しない生まれ方なので、緊張感が漂う不思議なイメージ」
しばらくやりとりをした後、小野川さんは今度は、合奏をしていた木管セクションの部員みんなに向けて話し始めた。
「こんな音が吹きたい、という思いや考えがないと、面白くない。生きた音を吹かないと伝わらない。もっとメッセージを伝えんとあかんで」
関西大会も高水準、めざすはその先の頂
全日本吹奏楽コンクールに17回出場している部をまとめる小野川さんには、一つのセオリーがある。
生きた音とは、たっぷりと息…