カンボジアで通貨のデジタル化が急速に進んでいる。日本企業の技術を用いた電子決済システム「バコン」の導入がきっかけだ。国内で使われる通貨の9割近くを米ドルが占める国で、デジタル化は自国通貨「リエル」の普及につながるのだろうか。リエルの顔としてカンボジア国立銀行(中央銀行)を率いる女性初の総裁、チア・セレイさん(44)に今後の戦略を聞いた。
7月初め、チア・セレイさんは大阪市にいた。カンボジアと日本がQR決済の統一規格の連携を始め、それを祝う式典に出席するためだ。この連携では、それぞれのモバイルアプリを使い、相手国でも自国通貨による決済ができるようになる。
自ら大阪・関西万博の会場にも足を運び、アプリを使った決済を実演してみせた。さらにフェイスブックを通じて、自国民にもアピールした。
「技術的な突破口にとどまらず、経済や文化、人々の交流の架け橋になることを期待している。カンボジアは世界のデジタル経済に参加します」
日本が他国とこうした連携をするのは初めてだが、カンボジアは先を行く。デジタル技術を使うことにより、近隣のマレーシア、タイ、ラオス、ベトナム、シンガポールの東南アジア諸国、中国、さらにフィジーなど太平洋諸国との間でも国境を越えた決済取引のネットワークを広げている。
起爆剤となったのは、202…