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 日本の5人に4人以上が、政府に気候変動対策の強化を求めている。この傾向は、世界全体と同じだ。でも行動にはつながりにくい現実がある。関心をとどめ、課題を解決するにはどうしたらよいのか。

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 山形県の農業男性(69)は、7ヘクタールの田んぼでコメを作りながら、40頭の米沢牛を育てる。例年の猛暑で、水不足やコメの高温障害に気をもむ。肉牛は暑さに弱い。夏は連日30度を超える牛舎の扇風機はフル稼働で、月の電気代は3万円から5万円に増えた。「このままどんどん進めば困ったことになる。温暖化は人間が作った人災だ」。電気、石油をなるべく使わないような政策を進めて欲しいと話す。

 2024年にネイチャー・クライメート・チェンジに掲載されたドイツなどの研究グループの論文(https://doi.org/10.1038/s41558-024-01925-3)によると、「自国や地域の政府にさらなる気候変動対策を求める」と答えた人の割合は、日本では85.7%。先進7カ国(G7)の中では、イタリア(92.8%)、ドイツ(85.9%)に次ぎ、仏(85.1%)、英(83.4%)、カナダ(82.5%)、米(74.0%)よりも高かった。

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 一方、静岡大の小杉素子准教授(社会心理学)などが行った日本人の気候変動に対する態度の調査(24年)では、温暖化を心配して積極的に行動を取ろうとする「警戒層」は20.7%だったのに対し、態度を表明しない「無関心層」は32.3%。温暖化は懸念するが対策には消極的な「用心層」は31.7%にのぼった。温暖化自体を疑い、対策にも消極的な「懐疑層」は4.4%だった。以前に比べて、無関心層は減ったものの、用心層が増えているという。

 政府の対策強化は広く支持されているのに、なぜ一人ひとりの行動につながっていかないのか。

 小杉さんは「この20年以上…

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