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北村滋 1956年生まれ。警察庁に入庁後、警備局外事情報部長などを歴任。野田内閣で内閣情報官や、安倍内閣で国家安全保障局長を務めた。経済安全保障政策も推し進めた。

インタビュー連載「電ゲン論」

 「脱炭素社会」の実現が叫ばれるいま、あらためて「電気」をどうつくるべきなのかが問われています。原発の賛否をはじめ、議論は百出しています。各界の著名人にインタビューし、さまざまな立場から語ってもらいました。

 再生可能エネルギーや電気自動車などの世界の脱炭素技術の大半は、中国に依存しています。国際エネルギー機関の調査では、太陽光設備とバッテリーは8割、風力設備は6割を中国がつくっています。脱炭素のためにこうした製品が必要となる一方、一部の国に依存する状況から安全保障上のリスクを懸念する声もあります。欧米などは脱中国を進めて、国内で内製化する動きを進めています。

中国がシェア握る脱炭素技術

 脱炭素の流れは日本の国益につながるのか――。中国製品が脱炭素技術で大きなシェアを占めることから、近年は「脱炭素は中国を利するだけ」との意見すら散見されます。脱炭素の流れに対し、日本はどうするべきなのか。国家安全保障局で経済安全保障を訴えてきた北村滋さんに聞きました。

 ――世界のエネルギー環境が大きく変わっています。

 2022年2月のロシアのウクライナ侵略の後、欧州は基本的にロシア産の化石燃料を断たれ、再生可能エネルギーへのシフトが大きく加速しました。国際エネルギー機関(IEA)によると、ソーラーパネルのモジュール、風力発電のモーター、バッテリーなど、再エネの中核となる様々な物品の中国への依存度合いが極めて高い状況になっています。

 ――依存先がロシアから中国に移ったと。

 エネルギーが安全保障と非常に密接に語られ、エネルギーの武器化が進む今日において、こうした高い依存関係から脱却する必要があります。欧州も米国も、この点についてはかなり深刻に考えています。再エネに関する様々な物品の内製化を進めています。つまり、脱炭素と脱中国を同時に進める「グリーン経済安全保障」が必要なのではないか、というのが私の問題意識です。

 ――日本はすでに相当中国に依存しています。脱中国は可能なのでしょうか。

 改善が必要だろうと思います…

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