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クローン病の薬の例=患者の女性提供

 国内に7万人の患者がいると推計されるクローン病。原因不明の難病だが、近年、病気の研究が進むにつれて治療法が増えてきた。5月19日は、クローン病も含む炎症性腸疾患(Inflammatory Bowel Disease)への理解を求める「世界IBDデー」。

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 クローン病は、小腸や大腸などの消化管に炎症が広がる病気だ。主な症状は腹痛と下痢で、トイレが頻回になったり、発熱や体重減少が起きたりもする。10~20代の若者で発症しやすい。

 札幌医科大医学部の仲瀬裕志教授(消化器内科学)は「早期の診断と治療が、その後の長期的な経過にも大きく関わる。症状があれば早めに受診することが大切です」と話す。疑わしい症状があれば、便検査や内視鏡検査を行う。

 根治のための治療法はなく、症状が落ち着いた状態(寛解)を長く続けることを目標に、薬を中心とした治療をすることになる。

病態の研究進み、薬の選択肢増える

 軽症~中等症の人の場合は、まずは5―アミノサリチル酸製剤と呼ばれる旧来型の薬や、短期的にステロイド剤を使って、腸の炎症を抑える。腸を休ませて成分栄養剤で栄養を取る治療法も行われる。

 中等症~重症の人もステロイド剤で炎症を抑える。中には寛解が難しい患者もいるが、近年、クローン病の病態が詳しくわかってきたことで、薬の開発が進み、既存の治療が効かない難治の患者にも治療の選択肢が増えてきている。

 バイオテクノロジーの進歩で、生物学的製剤と呼ばれる薬が、2000年代以降に増えてきた。炎症を起こす仕組みの部分に直接、働きかける画期的な薬だ。

 例えば、炎症反応に関与するTNFαという物質や、クローン病の病態のカギになるIL12やIL23といった物質に対応した薬がある。点滴や注射で使う。

 さらに、炎症に関連する細胞内のシグナルを抑えるJAK阻害薬と呼ばれる薬もあり、こちらは飲み薬だ。

 寛解ができた人は、維持するために長期的な治療に入る。寛解の導入に使った薬を続けたり、栄養療法を続けたりして、再発を防ぐ。

 仲瀬さんは「治療の選択肢が多くなり、長期的に寛解を維持できる患者さんが増え、それぞれに合った治療法を選択できる時代が到来しています。主治医の先生としっかり相談して治療を選んでほしい」と話す。

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