【動画】T4練習機の墜落時の音を記録した防犯カメラの映像=百軒亭提供
航空自衛隊のT4練習機が墜落してから、21日で1週間になる。愛知県犬山市の事故現場では懸命の捜索が続くが、搭乗者2人の安否はつかめていない。信頼性が高いとされてきたT4の事故を防衛省は重く受け止めるが、原因究明は難航も予想される。
事故は14日午後3時ごろに発生した。小牧基地(愛知県)を離陸したT4練習機が約2分後にレーダーから消失。小牧基地の北東約13キロにある犬山市の入鹿(いるか)池周辺からエンジンらしき残骸や搭乗者のヘルメット、座席シートなどが発見されており、搭乗者と思われる体の一部も発見された。
行方不明になっているのは、新田原(にゅうたばる)基地(宮崎県)所属の井岡拓路1等空尉(31)と網谷奨太2等空尉(29)。防衛省によるレーダーの解析では、事故機は離陸後1分間は正常に上昇していたが、高度1400メートルほどで右旋回をしていた時に急降下が始まった。墜落するまでの数十秒の間、パイロットから異常を伝える通信や、緊急脱出時に発せられる救難信号は確認できていない。当時、天候に問題はなく、離陸前の機体点検も異常はなかったという。
入鹿池近くの博物館明治村を訪れていた静岡市の男性(28)は、ゴォーという音がして空を見上げると、飛行機が機首を下にして、ゆっくり回転しながら落下していくのが見えたという。機体が木々で見えなくなった直後に「ドーン」と大きな爆発音が聞こえた。「(池には)オイルの臭いが充満していて、水面は油膜で色が変わったように見えた」と話す。
調査急ぐ防衛省 長期化すればパイロット育成に影響も
T4練習機は安定性が高く操縦がしやすいため、空自パイロットの間では「信頼がおける機体」とされ、曲技飛行隊「ブルーインパルス」でも使われている。それだけに事故が起きた衝撃は大きい。
防衛省関係者によると、事故原因について、エンジンなどの「機体トラブル」や、鳥の群れに衝突する「バードストライク」、パイロットが機体の向きや位置を誤認する「空間識失調」などが考えられている。
空自は事故直後からT4の運用を停止しており、調査が長期化すればパイロット育成に影響が出かねない。まずは墜落現場で見つかったエンジンらしきものなど残骸の分析を進める。
ただ、事故機には高度や速度などが記録されるフライトデータレコーダー(FDR)が搭載されていない。民間機は航空法で搭載が原則義務づけられているが、自衛隊機は航空法の適用外。空自が運用するT4練習機約200機のうち、約60機が未搭載だという。
FDR搭載なし 予算「ミサイルや戦闘機が優先」
FDRの搭載には、一般に1…