アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト
撮影:ニック・アルフ
右:「『臍−単眼鏡』とジャン・アルプ」(1926年ごろ)
アルプ財団、ベルリン/ローラントシュヴェルト
ⓒ VG BILD-KUNST, Bonn & JASPAR, Tokyo, 2024 C4762
夫妻それぞれが芸術家として活動したアーティスト・カップルの展覧会が最近、目立つ。男性優位な美術界や美術史の中で見落とされてきた女性芸術家を見直す上で、「カップル」という枠組みはどう機能するのか。
「対等」な関係、溶ける個性
東京・アーティゾン美術館では6月1日まで「ゾフィー・トイバー=アルプとジャン・アルプ」展が開かれている。20世紀前半にスイスやフランスで活動した夫妻の2人展だが、彫刻家・画家・詩人として著名な夫ジャンに対し、妻ゾフィーの作品が日本で紹介される機会は限られてきた。
テキスタイルやビーズのデザインといった応用芸術から出発し、空間デザインや抽象絵画へと領域を広げたゾフィー。活動が多面的である上、絵画などのファインアートと比べて応用芸術がマイナーな分野と見なされてきたこともあり、国際的な評価が確立されたのはようやく近年のことだ。
そうしたキャリアの特殊さゆえ「彼女を単体で扱うと、どんな時代に何を考えて創作していたのか見えづらくなる」。比較対象として身近な同時代人であるジャンとの2人展が望ましかったと、担当の島本英明学芸員は説明する。その上で、2人の作品を混在させ、時代順に見せることで「影響関係のストーリーを無理やり探すのではなく、自立したおのおのの創作活動を見せたかった」と話す。
今展では、2人が共同制作し…