英国史上最大規模の冤罪(えんざい)事件となった「郵便局事件」で、政府が設置した独立調査委員会は8日、主に被害者への補償に焦点を当てた最初の報告書を公表した。金銭的な補償の適格者は「現在で1万人」とされる。事件が少なくとも13人の自殺につながった可能性を排除できないとした。
- 「郵便局事件」とは? わかりやすく解説
事件は1999年、富士通の100%子会社の会計システム「ホライゾン」が英国各地の郵便局に導入されたことがきっかけ。実際の現金残高よりも、システム上の残高が多く表示される例が相次ぎ、郵便当局からの圧力で郵便局長自らが補塡(ほてん)したり、払えずに刑事訴追されたりした。
政府によると、ホライゾンが証拠となって郵便当局や検察当局から起訴され、有罪判決を受けたとみられる個人は952人に上る。こうした有罪判決は順次取り消され、被害者への補償も進められている。6月末までに、7900人超に計約10億9800万ポンド(約2180億円)が支払われたという。
ただ、直接の被害回復が不可能になった個人も少なくない。報告書では「死亡とホライゾンに因果関係があるとの断定的な結論を出すことはできない」としつつ、13人を超える個人が冤罪事件を苦に自殺した可能性を指摘した。
調査委は2020年に設置され、元高等法院判事が率いる。報告書は298人の証人や27万件超の文書などに基づいて作成され、166ページからなる。
富士通についての言及は
報告書は「完全かつ公正な金…